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リマインド
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夜の星が、輝いているのは過去の光で
それを見ている僕達は今を生きている
でも、今光っている星を、僕は見れない
過去しか拝めないのだ。
今を生きているのに、どうして過去しか拝めないのか。
小学生の頃、それが非常に受け入れがたかったのを覚えている。
翌朝、いつもより早めに起床した。
少し大きな旅行用カバンに、必要なモノを詰め込んで、駅へと向かう。
こう言う時少し後悔するのは、車の免許を取っていない事。
まぁ、バイト代もそんなに良くないから、
免許を取ると生活がぎりぎりになるのだが。
駅に着いて、特急券を買う。
寝台車に乗り込んで、自分のお気に入りの車両を探す。
これと言って、条件がある訳じゃないけど
何となく気に入った車両の、何となく気に入った部屋のトビラを開けて
そこに荷物を無造作に放り投げて、一息吐く。
飲み物を買って来ていなかったので、
一旦部屋を出て、自動販売機が在る方へと歩いていった。
心地よい揺れと、何処かの窓が開いてるのだろうか
柔らかい風のニオイ、夏だというのに少し涼しめなのが、不思議だった
自動販売機で、コーラを2本買うと、僕は元の部屋へと戻った。
部屋のトビラを開けると、猫が1匹、ベッドの上で昼寝をしていた。
目が覚めると、そこは病院だった。
私は起きあがって周りを見まわす。
いつもと変わらない。私は最近、目が覚めるとそこは病院だったという生活をずっと続けている。
消毒液のニオイは嫌いではないけれど、何もかも無いと嫌になる。
2日前、幼なじみに手紙を出した。
正確には、私の妹が手紙を書いて、それを私がポストへ投函したのだけれども。
直ぐに返事が来た。何を書いて出したのかは、解らなかったのだが、
もしも夏休みで、忙しくなかったら、
此方へ遊びに来て欲しい、と言う内容だったらしい。
案の定、彼は今夏休みで、暇をもてあましているらしい。
しかも、直ぐに此方に出向いてくれるとの事だった。
届いても、必ず返事がもらえるという保証は何処にも無かったが、
改めて返事が貰えて嬉しく思う。私も、きっとあの子も。
急いで妹の病室に行って、本を読んでいる妹に話しかける。
「斉藤くんから、お返事来たわよ?」
「!」
すると妹は、読みかけの本を栞も挟まずにぱたんと閉じて、私を見た。
なんて書いてあったの?や、
こっちに来てくれるって?など、
聞きたい事をひとしきり言うと
黙って私の回答を待っていた。
「直ぐに、此方に向かってくれる見たいよ」
「本当ッ!?」
こんなに嬉しそうに笑う妹を、久しぶりに見た。
私は、立て続けに彼女に知らせなければいけない事を言った。
「あと、1週間の外出許可が出たわ。
_続けて発表された事実に、妹はもっと嬉しそうに微笑んだ。_
1週間はずっと家に居て良いの!」
「…!」
それじゃあ、家で斉藤くんに会えるんだね!
そう言って、嬉しそうに微笑んで、帰りの支度をし始めた。
急いで私も支度を手伝った。
車いすを持って来ようか、と訪ねたら、
リハビリしてもう歩ける様になったんだよ、と
嬉しそうに立ち上がる妹を見て、
今日の夕食はゆかりの大好きなエビチリにしようかな、と目論む。
「今日は、帰って斉藤君を迎える準備をしないとね。」
「そうだね!」
準備が終わり、父が迎えに来て、車に乗り込む。
看護師さんに薬の使用方法などを聞いて、何かあった時の緊急の連絡先なども貰った。
病院がどんどん小さくなるに連れて、妹は不安そうな顔をしていたが、
我が家が見えてくると、だんだん表情が明るくなり
帰ったらまず、部屋を片付けて、など、ひっきりなしに予定を組んでいる用だった。
斉藤君が、駅に着いたと連絡があったのは、翌日のお昼前だった。
お父さんが長電話をして、到着が少し遅れたのがおかしくて、
電話の後で、2人して笑っていたのは、斉藤くんに聞こえてしまっただろうか?
寝台車に揺られて、心地よい眠気にさらされた時
耳元で鈴の音がして、目が覚めた。
「 にゃあ 」
「…あ?」
さっきの、自動販売機帰りの時の猫だ。
あれから我が物顔で僕のベッドに昼寝をしていた猫を追い出して、
トビラを締めたハズなのに、また進入しやがって…
しまいには睡眠を妨害された。
イライラして、猫とにらみ合っていると、
猫は僕にさも興味が無い様にフイっと視線を逸らし
ベッドの横に在る窓へと行って、がたがたと窓枠を引っ掻き始めた。
「コラ、…ダメだろ引っ掻いちゃ…」
「にゃー」
割れたら大変なので、急いで猫を抱き上げる。
すると猫は大人しくなって僕を見上げた。
こいつ、オッドアイなんだ…。
意外と、可愛い。

「…、どうしたんだよ」
「にゃ」
猫は視線を窓に向けた。
僕も、つられてそちらを見る。
窓の外は、夜空一面に星が散らばっていた。
感動して、窓を開けて顔を出した。
心地よい、冷たい風が頬を撫でて行く。
地面が眩しい事に気付いて、下を覗き込んだ。
田んぼの水が、星の光を反射して光っていた。
幻想的な景色に、しばらく言葉を失った。
「すご…」
僕がしばらく外を眺めて、心地よい風に吹かれていると
猫は満足そうに喉を鳴らした。
翌朝、駅について、古雅家に電話を入れる。
お父さんが電話に出て、おお、久しぶりだね、から始まって約30分の長電話になった。
後で姉妹が、面白そうに笑っている。
僕は、はぁ、そうですか、とかしか言えなかったから
それが面白かったんだろう。おもしろがらないで止めて欲しかった。
それじゃあ、今から迎えに行くから、と言って電話が終了した。
テレホンカードの残り度数が、後少しになった。
「斉藤くんーっ!!」
「お、古雅!」
30分位して、3人の人間が僕に近づいてきた。
背の高い父親と、白い、ツバの大きい帽子をお揃いで被った姉妹だった。
名前を呼ばれて振り返る。久しぶりだね、と顔を合わせると
全然変わってないね、と言われる。
そっちこそ、中学のころと変わらないな、と言ったら
軽く本気で背中を叩かれた。
駅で合流して、お父さんの車に乗って、古雅家まで走った。
途中で見る景色が新鮮で、僕は外ばかり見ていた。
緑豊かで、所々林や森があって、後で散歩に行こうかな、なんて考えていた。
家に着いて、まず涼んでから(緑がたくさんあって、心地よい風が吹いていたとはいえ、太陽の日差しが強くて結局皆伸びていた)夕飯作りに取りかかった。
僕と、古雅のお父さんは彼女たちに言われて、
食器を用意したり、机を拭いたり料理を運んだりしていた。
今日は中華料理がメインだ、とか言って、結局中華料理なのはエビチリしか無かった。
好きだから良いけれど。
翌朝は、7時くらいに起こされて(お父さんが僕の目の前で手を叩いて起こした)散歩をした。
僕が行きに気になっていた、森にも行って皆でキノコを探して歩いた。
帰りには田んぼの脇道を選んで通り、
近くに1件しか無いというコンビニへ行って
コーラと花火のセットを買った。
花火は今夜、晩飯を食べたらする予定だ。
帰宅後、例の如く夜飯の準備をお父さんと手伝い、
無事に晩飯にありつけた。今日は和風なのだ、
と言ってそうめんがメインだった。
食事が終わって、片づけをして、虫除けスプレーをして、外に出る。
買ってきた花火セットを開けて、花火を始めた。
火薬のニオイが懐かしい。
昔は、3人と古雅のお父さんとで、良く花火をしたっけな。
準備やら、水の入ったバケツを運んでくるやらで疲れた僕は、縁側に座って
花火にはしゃぐ2人を眺めていた。
思ったより、楽しそうで良かったと思う。接し方も昔と変わらず、安心した。
花火の火が写るバケツの水を眺めていたら、先日見た昔の夢を思い出した。
水たまりに映る太陽が、眩しかったのしか思い出せなかった。
ふと、隣に居るお父さんを見た。
僕と同じように、縁側に座って2人を眺めて居たけれど、
どことなくその瞳が遠い場所を見ている用に感じた。
僕の視線に気が付くと、お父さんは少し微笑んで、
茶を入れてくるな、と言って奥の座敷に消えていった。
少し気になったけれど、線香花火をやる、と言う事で姉妹に引っ張り出された僕は
そのことをすっかり忘れて、線香花火の火をどれだけ長く持たせるかの競争に夢中になった。
翌日、暑さでお腹が空いて目を覚ますと、
午前の10時を回っていた。
「(今日は、誰にも起こされなかったなぁ…)」
急いで一回へ降りて、縁側で花火の片づけをしていたお父さんに挨拶をした。
2人は何処へ行ったのか聞くと、
なにやら買い物へ行ったらしい。との事。
買い物に行くなら、荷物持ちに成ったのに、と呟くとお父さんは笑って
じゃあ、このバケツを洗い場に持って行ってくれ、
と昨日より重たくなったバケツを僕に手渡した。
お昼を回ってから、姉妹が帰ってきた。
今からお昼ご飯を作るわよ、と元気よく宣言すると、
2人はエプロンを身につけながら、台所へと消えていった。
…さて、買い物へ行った荷物は、どうしたのだろうか?
夜は皆でまた縁側に出て、星空を見て、虫の鳴き声を聞いた。
ゆっくりとした時間が、あっという間に流れていった。
明日こそは、2人と一緒に買い物に行こうと思う。
もちろん、疲れていなければ、の話しだが。
[thick with shadows cast by a night sky.:夜空が黒々と影を下ろして]
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The Last Wish〜最後の祈り〜
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勢いよく聖堂の扉を開くと、正門のほうから三人の兵士たちがこちらへ向かって駆けてくる。
「団体さんのお出ましってかっ!」
俺は状況を把握しきれていないのかきょとんとした表情をしているミルティアに振り向く。
「ミルティア、危険だと思ったら自分で逃げられるな?」
すると彼女はふるふると首を振って、黙って俺の服をギュッと握った。
ミルティアもアルジェントなのだから、そんじょそこらの人間よりは戦える筈なのだが……。
「……、分かったよ、それじゃあ俺の後ろからできる限り離れるなよ?」
「戦うの……?」
「捕まったら試験がだめになっちゃうからな…大丈夫、ちゃんとミルティアのことは守るから」
俺の言葉にミルティアはそれ以上は返そうとはしなかった。
「無駄な抵抗はするなよ!」
兵士たちの一人がゆっくりと俺に近づいてくる。
「……ああ」
俺はミルティアを後ろにかばいながら両手を上げ、兵士に無抵抗の意を伝えた。
「……」
兵士は俺の態度を怪しみながらも歩みより、俺の右腕に手をかけた。
――いまだっ!――
俺の右腕を掴もうとした兵士の腕に俺は瞬時に左手をかける。
「うっらぁぁぁあああっ!」
そしてそのまま重心を前方に傾け、全身を使って重たい鎧を纏った兵士を俺は柔道の様に背負い投げた。
「貴様っ!」
その光景を見ていた他の兵士が勢い良く己の剣を抜き、構えるや否や俺に斬りかかってくる。
「おせえよっ!」
しかし、兵士が剣を振りお下ろす前に俺は懐に潜り込み、そのまま兵士の顎に向って渾身の一撃をお見舞いしてやった。
兵士はぐぬぅ……! という奇怪な声を漏らしつつ、その場に崩れるように倒れこんだ。
――あと、一人――
最後の兵士が後ろに居る事はわかっていた。
だが、振り向くとそこには剣を振りおろそうとしている兵士の姿があって、気付いた時には既に避けるにも身構えるにも遅すぎた。
「――死ねっ!」
迫りくる斬撃。
まずっ、しくじった。
一人に気を集中しすぎて、こいつの動きまで気にかけてるひまがなかった。
避けられない……。
――やられる――
俺は本能的に瞳をギュッと閉じてしまい、ただ最後の瞬間を無情に迎えることしかできなかった。
そのときだ。
一撃。
一本一本の黒髪が月明かりに照らしだされ、とても綺麗な一枚の絵のように。
そこには余裕の笑みで兵士の手から剣を蹴り落とす師匠の姿があった。
「師匠!?」
俺の言葉に師匠は珍しく、ため息をひとつつくと、こちらに歩いてきた。
ビシっという音と共に俺の額に激痛が走る。
「った〜〜……」
師匠のデコピンが炸裂した。
「甘いんだよ、お前は」
師匠はそれだけ言うと振り返り、剣を拾い上げようとしている兵士へと、右手に持った拳銃の銃口を向ける。
「うせろ!」
俺も聞いたことのない押し殺した師匠の声に、一歩たじろぐ兵士。
「そこまでだっ!」
突然聞こえた声の方へ振り向くと、聖堂内で俺たちのことを捕らえようとした少年がレイピアを抜き構えていた。
「なんだてめぇは」
「不信な輩に名乗る名など持ち合わせてはいないっ!」
「あぁ、そうかよっ!」
以下不確定進行
「走れ、八雲」
「師匠?」
「あいつは俺が引き受ける、先にアジトに戻ってるんだ」
「でも――」
「師匠命令だっ!」
師匠はそれだけいうと俺の背中を勢いよく押した。
俺はただ逃げることしかできない自分が悔しくて、下唇を噛む。
「いこう、ミルティア……」
ミルティアの手を引いて、俺はその場から駆け出した。
正門を抜け、夜の静まり帰った街を勢いよくかけていく。
「八雲、誰かいる……」
そのミルティアの言葉に俺は脚を止めた。
すると物陰から一人の少年が姿を現す。
赤メッシュの入った短い髪、体にはサラシを巻いたその少年は俺たちに向かい合う。
そして、俺の顔を見るなりにっこりとした笑顔を浮かべる。
「よう、王子様」
「……、誰だ……」
「おー、怖い怖い、そんな顔すんなって」
少年はおどけたように首をすくめた。
――なんなんだ、こいつ――
「俺の質問に答えろっ!」
「そう怒鳴るなって、俺の名前はソウだ」
ソウは俺に手を差し伸べてきた。
俺はソウの態度に嫌気がさし、パシっとその手をはじき返す。
「ってぇ、ちょっとちょっと、いきなりそれはねーんじゃねえの」
「うるさい、俺たちは先を急いでるんだ、お前にかまっている暇なんかない」
「そっか、まぁ、そっちになくても――」
するとソウはいきなりトントンと地面を蹴り上げ、フットワークを整えたかと思うと、俺に向かって左足で蹴りを放った。
「なっ!」
俺の前髪をソウの脚がかすめる。
「こっちは用事が大有りなんだ、よっ!」
ソウは立て続けに俺との間合いを詰めると俺の顔面に向け、拳を振り下ろす。
「んにゃろっ!」
俺はソウの拳をよけるとそのままソウの腕を掴み、投げ落とそうとした。
「っと、っぶねぇな」
ソウは俺が腕に手を伸ばすと同時にすばやい動きで後ろに一歩下がり、俺の動きを妨げる。
「へへ、なかなかしぶといじゃねーの」
ソウは楽しげに笑って身を構えなおす。
「じゃあ、こんなのはどうする?」
ソウは俺との間合いを詰めなおし、再び拳を振り下ろした。
「ワンパターンだな」
「そうでもねえよっ!」
「なっ!?」
ソウの拳は明らかに俺を狙った軌道じゃない、ソウは俺のすぐ後ろにいるミルティアへ向かって拳を振り下ろそうとしていたのだ。
「…ってめぇ…!!」
俺はミルティアの顔に向かって振り下ろされる拳を間一髪手のひらで受け止める。
「八雲っ!」
ミルティアの方には振り向かず、短く大丈夫と返す。
「戦ってる最中に他人の心配か?」
ソウは無理な体勢で拳を受け止めている俺に向かって右足で蹴りの一撃を見舞った。
防ぐ間もなく、その一撃は俺の腹部に深く沈みこむ。
「っぐ」
腹部から伝わる激痛に俺はそのままその場に崩れ落ちる。
「八雲――」
ミルティアが俺に駆け寄ってくるが、もう、顔を上げる余力さえ、俺には残されていなかった。
そんな俺たちに単調な足音でソウが歩み寄る。
「さて、王子様、それにおまけのお姫様も、俺についてきてもらうぜ」
そのソウの言葉を最後に、俺の意識は闇に解けていった。
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「さてと、どうすっかなぁ……」
俺は物陰から大聖堂の正門を覗いていた。
正門は二人の門番が見張っていて、そう簡単には中に入れそうにもない。
大聖堂への入り口は一つだけでどうしても正門から侵入するしかないんだけれども。
――せめて、あの番兵達の気が他にそれてくれれば……――
そんなことを思いながら様子を伺っていると、一人の番兵が正門の方へと走ってきた。
と、そこで少しの間番兵達が話していたかと思うとその三人の番兵達はどこかへ走り去ってしまった。
「……なんだ?」
何かが起こったんだろう。
運が良い、この機会を逃す手はない。
俺はそのまま、なるべく目立たないように素早く正門の中へと入っていった。
青々とした芝生が広がり、聖堂へと赤レンガの道が一本続いている。
その道を進み、目の前にある大聖堂の扉をゆっくりと音を立てずに開く。
大きな木で出来た扉をくぐる。
聖堂内はシンと静まりかえっていて、ステンドガラスから差し込む月明かりが室内を照らし、どこか神秘的な雰囲気をかもし出していた。
「すげぇ……」
思わず小さくつぶやく。
上手く言葉じゃ表すことが出来ないが、俺はその光景に思わず身体を震わせていた。
――と、感動してる場合じゃない――
首を左右にふって気合を入れなおすと聖堂の中央に置かれている女神像にゆっくりと歩いていく。
その像は長髪の女性が優しそうな表情で手を差し伸べていて、まるで生きているようだ。
そして、左手の薬指にはめられているルージェンの指輪。
「こいつだな……」
手を伸ばし、女神像からするりと指輪を抜き取った。
「よし、これであとは……」
無事に指輪を手にしたことに安堵し、俺は出口へと振り返る。
と、その瞬間、たっていられないほどの頭痛に視界が歪んだ。
「っく……」
足もとがふらつく。
俺はよろけ、女神像に手をつくとそのまま崩れ落ちた。
視界の歪みは酷さを増し、そして徐々に暗転していく。
瞳を閉じ、ただ痛みが和らぐのを俺はずっと待っていた。
――あれ……?――
目の前には何もない、ただ真っ白な景色がどこまでも続いていた。
「……俺、何してたんだっけ……、っぐ!」
記憶を思い出そうとすると、何か内側から頭の中を鷲掴みにされるような鋭い痛みに襲われる。
あまりの痛みにその場に塞ぎ込んでしまう。
すると背中にポンっと、誰かが手を添えるような感覚が伝わってきた。
俺はその感覚にびくっとし、今自分が聖堂にいることを思い出して、おそるおそる後ろを振り向いた。
すると、文字通り鼻と鼻が触れ合うほどの距離で一人の少女が心配そうに俺を見つめていた。
「……わっ!」
俺は少女の顔の近さと、そもそも予期していない人物が後ろにいたという二重の驚きで、思わず声をあげて後ろに後ずさってしまう。
するとその少女はそんな俺を見てクスっと笑った。
そして少女はゆったりとした動きで右手を俺の頬に添える。
少女の右手を通して柔らかな暖かさが伝わってきた。
すると、耳からではなく、直接頭の中に語りかけてくるように声が聞こえてくる。
この少女の声なのだろうか。
始めはぼんやりとだがその声は繰り返し繰り返し俺に何かを伝えるかのように響き続ける。
言葉は繰り返される度に鮮明に、そして透き通るような声で俺にこう語りかけてきた。
――私の声が、聞こえますか?――
その声とともにハッと目を開くと、視界が開けそれと同時に、俺の真上、聖堂の天井に淡い桜色の光を放ちながら一つの魔法陣が展開される。
そしてその魔法陣の中心部から魔法陣と同じ桜色の衣服を身にまとった少女が姿を現した。
腰まである銀色の長髪を宙に漂わせ、うっすらと開いた灰色の瞳で俺を見ると少女はニコリと微笑む。
そしてふわりと地に足をつけるとゆったりと俺の元へ歩いてきて俺の手を握った。
「え……、えっと……」
「ルージェン……」
俺がどぎまぎしていると少女のその声に、いつの間にか女神像の指輪を自分でしていたことに気がつく。
「いつの間に……」
「……、名前……」
「え?」
「名前、教えて……」
少女はぎゅっと握っている手に力を込めると俺にそう言った。
そういえば聞いたことがある。
アルジェントと召還師はお互いの名前をもって契約の媒介にすると。
多分、この指輪のルージェンに引き寄せられて召還されてしまったのだろう。
「俺は……」
一瞬言葉に詰まったがすぐに続けた。
「俺の名前は八雲」
「……、八雲、私の名前はミルティア」
「いつの間に契約を……」
「……、私の声、聞いてくれたから……」
「え?」
俺が少女に聞き返しても少女はそれ以上何もしゃべろうとはしなかった。
さっきの魔法陣といい、この子の発言と言い、多分この子がアルジェントなのだろうということくらいは俺にでも分かる。
多分、指輪を女神像から取ったときにこの指輪のルージェント契約してしまったんだろう。
でも、俺アルジェントとの契約方法なんて知らないのに一体……。
頭の中にぐるぐると考えが渦巻く。
と、そのときだ。
「誰だっ!」
聖堂に一人のピリピリとした少年の言葉が響いた。
俺が声のしたほうを振り向くと、一人の少年が俺と少女の方を睨みつけているのが分かった。
「まずっ、バレちまったか……」
俺は小さく舌打ちをすると少女の手をとって出口に向かって駆け出そうとした。
「待て、貴様!」
「待てって言われて待つやつはいねえよっ!」
いや、待つなって言われて待つヤツもいないか。
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四つ葉の葉を大切に持っていたのに
ある日、辞書に挟んでいたら、葉が一枚取れてしまった。
あぁ、これじゃあ三つ葉じゃないか。
しばらく机の上に放置していたら、三つ葉のクローバーは
四つ葉のクローバーの栞になって帰ってきていた。
机に向かって、しばらく黙り込んでいた。
散歩帰りに、文房具屋に行って便箋と封筒と買ってきた
が、書く事が思い浮かばない。いや、書く事は、訪ねたい事はたくさん有るのだが、
何をどこから、どう切り出したら良いのか解らなさすぎて、眠たくなってきた。
訪ねたい事を整理する。
2人は元気なのか。今、何をしているのかどういう場所へ住んでいるのか。
取り合えず、それだけ聞く事にした。
文章を組み立て、便箋に書いて、封筒に入れて、宛先を書こうとして、ふと思った。
僕がこの手紙を返せるという事は、彼女等の住所がわかる。
となると、彼女らが何処に住んでいるかが解る。手紙の6割をしめている内容が
まず始めに解決された事に僕は感動すら覚えながら、
彼女から来た封筒をひっくり返した。
書き直しか…せっかく丁寧に書いたのに。そう思って、彼女から来た手紙を見て
僕はひとり密かに笑ったのだった。
_彼女から届いた手紙は、未完成だった。
送り主の住所が行方不明だ。
大変だ、これでは返事が遅れないじゃないか。
郵便番号は発見できたので、それを元に僕は住所を調べる事にした。
目が覚めると、そこは病室だった。
私は起きあがって周りを見まわす。
いつもと変わらない。私は最近、目が覚めるとそこは病室だったという生活をずっと続けている。
白は嫌いではないけれど、何もかも白いと嫌になる。
一週間前、幼なじみに手紙を出した。
けれど一向に返事が来ない。もしかして、届いていないかも知れない。
届いても、必ず返事がもらえるという保証は何処にも無かったんだ、と改めて気が付いて
少し落ち込んだ。
病室に帰って、読みかけの本を棚から引き抜く。
一週間くらい前から、体調が優れ無かったので、続きを読んでいないのだ。
もう大分続きが気になってしょうがない。
栞を目印にページを開くと、一枚のメモ用紙が出てきた。
見覚えは会ったが、いつも使っているメモ用紙だったので、何を書いたかは覚えていない。
拾ってみてみると、綺麗な字で私の家の住所が書かれていた。
「あ…!」
大変だ、彼に出した手紙に、こちらの住所を書く前に送ってしまった。
私は急いで彼にもう一枚手紙を書き始めた。
翌朝、彼女から住所のかかれた紙が送られてきた。
綺麗な、青空みたいな便箋に、透き通ったブルーのペン。
窓を開けて、目を上げると、期待した通りの青空が広がっている。
、出発しよう
そう心の中で唱え、ひとり頷いて、玄関を出た。
まだ梅雨なハズなのに、もわっとした夏の、
僕が好きだった、プラムの木の、
昔を思い出させる様なニオイがして、歩くたび、立ち止まって辺りを見回した。
(僕が昔いたトコに似てるのかなぁ)
住所のかかれた紙を片手に、僕は彼女の家を探し、歩いた。
時々有る電柱の住所を確認しながら歩く。
此処だ、と思った電柱の近くを探すと、一軒、道路を挟んだ向こう側に家が建っていた。
(…猫?)
家の前に、仔猫が座っていた。
玄関を見つめ、そのトビラが開くのを待っている様だった。
(僕とおなじお客さんかもしれない)
随分と可愛らしいお客さんだ。そう思って玄関へと歩みを進める。
ふと気が付くと、横から車が迫っており、慌てて後へ下がる。
トラックが僕の鼻先を通り抜ける。嗚呼、排気ガスのニオイだ。
今度こそ左右をキチンと確認して、玄関へと向かった。
( あれ?)
玄関の前、先ほど仔猫が居たところに、少女が立っていた。
猫は車にビックリして去っていってしまったのだろう。
可愛かったのに、惜しい事をした。
少女は此方を向いて、会釈をした。僕もつられて会釈をする。
その子は、僕から視線を外すと、玄関を見上げた。
その横顔が、どことなく彼女に似ている気がした。きっと気のせいだけれども。
インターホンとか、無いのかな?
僕が呟いて隣を見ると、少女は居なくなっていた。
前から足音がしたので顔を上げると、
先ほど隣にいた少女が玄関のドアノブに手をかけている所だった。
僕がぼーっと眺めていると、少女がドアを開け、玄関を覗き込んで此方を向いた。
どうしたの、僕が呟くと少女は、
家、誰も居ないの、そう言って、玄関を後背にドアを閉めた。
そう言えば少女の後に建っている家に、ヒトの気配は無く、今現在誰かが住んでいる気がしなかった。
「双子の女の子が居る、って聞いて来たんだけど…」
少女は首を振って、ある方向を指さした。
嗚呼、家を間違えたのかな、そう思いそちらを仰ぎ見る
(……、?)
そこには、夏の青空が広がっているばかりだった。
僕がしばらく固まっていると
刹那、風が吹き、青々とした木がみるみる内に散っていった。
散った葉は皆、赤く、まるで一瞬で秋が来たかのようだった。
周りの木々には実がなり、空は寂しさを帯びていた。
…、さっきまであんなに晴れていたのに。
ぼーっとして、我に返る。
そう言えば、今日はいつだったろう?
手荷物は、財布とたまたまポケットに入っていた飴だけ
彼女から貰ったはずの住所が書かれた紙は、途中で落としてしまった様だ。
そう言えば僕は、どうやって此処に来たのだろう。
徒歩?自転車?電車?…それとも飛行機だろうか、そんなに時間が経った様に思えない。
所持金もそんなに無いハズだし、住所の紙は失くすし。
日付と時間を確認したくて、腕時計を見ようとして、
左腕が軽い事に気が付く。
腕時計をし忘れた様だった。嗚呼、どんだけ慌てて居たんだ、僕は。
溜息を付いて、現実、問題に取りかかる。
先ほどの少女が不思議そうに此方を見ていた。
「此処には、誰も住んでいないの?」
僕は出来る限り微笑んで、少女に聞く。
少女は首を振って、ある方向を指さした。
嗚呼、家の主が帰ってきたのかな、そう思いそちらを仰ぎ見る
「…、あっちに、何かあるの?」
何もないわけではないが、僕が来た時と変わらない風景がそこにあって、
少女は、声を発するでもなく、僕を見上げた。
僕は今すぐに答えが欲しかった訳でも無かったので、しばらく指さした方向を眺めた。
しかし、そこにはただ、夏の青空が広がっているばかりだった。
青空、地面には木の実だろうか?
赤い実が落ちて、割れていた。
本来の此処へ来た目的を忘れそうになって、また我に返った。
彼女達に会いに来たんだ。
「……?」
さっきは木の実なんて地面に落ちていただろうか?
木は青々としていただろうか?
僕は幻覚を見ていたのか?暑さと疲労でおかしくなってしまったのかも知れない。
大体、何時間歩いたかも解らないのだ、しょうが無いかも知れない。
そう思って、前を向いた。
少女はまだ此方を見ていた
僕は気長に、また質問をしようと、口を開いた。
「……、? …?」
まるで、口の中から空気が無くなってしまったかの様な感覚があって、
声を発しようとすると、声帯を押される様な感覚
つまり、声が出ないのだ。これは困った。
身振り手振りで、取り合えず近くにいる少女に、僕に起こった非常事態を伝えようと思った。
空気が、全部鉛になってしまったかの様な、気怠さ。
腕が上がらない。動きが全部鈍くなり、息をするのも億劫になってしまった。
(……何か、悪いモノでも食べたかな?)
目の前がちかちかしてきたので、座り込もうとする。
足の筋肉が麻痺して、地面に崩れる様に座った。
先ほどまで居た少女はもう近くに居ない気がしたが、迷子にはなっていないと思ったので
あまり気にならなかった。
さて、どうしよう。
何とか地面に座り込んで、なんとか息をする。
肩で息をしながら、応急処置の仕方を思い出した。
数分後、自分で自分を救えない事を思い出し、がくん、と肩を落とす。
地面が揺れ、低いエンジン音がした。
顔を上げようとする。上げる。どんどん視界が開ける。
嗚呼、思った通りだ。
先ほど通り過ぎたハズのトラックが、僕の方へ向かってきていた。
あれ、何でだろう…?、ぼーっとしながら
嗚呼、此処は道路なんだから、トラックが通るのは当たり前か、
なんて考えながら、立ち上がれないで居た。
視界の端に、小さな陰。
先ほど家の前にいた仔猫。
僕の方を向いてるのか、トラックの方を向いているのかは解らなかったが
僕の前まで歩いてきてそこへ座り込んだ。
危ないから、道路の端に行きなよ、そう言おうとして口を開いた。
「 」
「…え?」
耳の奥、水たまりに、雨粒がこぼれ落ちた様な、優しい声
此処まで来るの、大変だったでしょう?
目の前で、彼女が微笑んでいた。
仔猫は少女の傍に寄りそっている。
あぁそういえば、と後を振り返った。
トラックは何事も無かったかの様に道路を走り続けて居て、
僕も、何事も無かったかの様に此処へ座っている。
もう訳が分からなくなって、目眩がして、気持ち悪くなった。
やっぱり僕は轢かれたのかな?そう思ったら、目の前が真っ暗になった
「……、あ、………?」
首が痛い。ついでに太股も痛い。
もうどれくらい電車に揺られていたんだろう
僕は腕時計のアラームで目が覚めた。
案の定、車内に乗車客は居らず、僕はゆっくりアラームを止める。
手には買い物リストのメモ。
腕には、僕の好きな腕時計。アラーム付。
向かい側の窓からの景色を確認する。
嗚呼、もうこんな時間だ。
「……。」
僕の隣にはスーパーの買い物袋。
握りしめたメモに書いてある食材やらが袋に閉じこめられ、僕と一緒に電車に揺られていた。
(なんだ、夢をみてたのか)
電車が止まる。
この次の駅が、僕の家の最寄り駅だ。
何人かがこの駅で降りたのか、車体が揺れて、それを確認したかの様にトビラが音を立てて閉まる。
ゆっくりと電車が動き出した。
スーパーの買い物袋の中身が、がさがさと慣性の法則に逆らわずに、
進行方向後へと転がって行く。
ああ、大変だ。そいつ等を追い掛け、買い物袋へ連れ戻す。
ふと、窓に反射した太陽と目があった。
そして、窓の外の風景に釘付けになった。
ある一軒の家。
家の前には仔猫と少女。
主の帰りを待つ様に佇んでいる。
一瞬だったが、僕の夢の中の登場人物が、そこに居た様な気がした。
ただ、通り過ぎてしまったため、一生懸命振り返っても、あまり良く見えなかった。
メモの中身から言うと、今日の晩ご飯は肉じゃがらしい。
やれやれ、とスーパーの買い物袋を僕の隣に座らせて、ハッとした。
なんで僕は、隣町のスーパーへと買い物に行ったんだろう。
翌朝、彼女から住所のかかれた手紙が送られてきた。
[lost property:忘れ物をする]
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The Last Wish〜最後の祈り〜
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まぁとにかく、受けたいか受けたくないかと聞かれたら、受けたくないわけがないわけで――
「はいっ、俺早く一人前のハンターになりたいです!」
俺は料理なんかそっちのけで師匠にそう返した。
すると師匠はしばらく難しそうにうーんと唸っている。
そして、不意に何かに気づいたように、
「シチュー、焦げるぞ?」
と、俺に忠告した。
ん……、っと、忘れてた!
とにかく今は料理を作ることに専念して、夕食のときにまた師匠に迫ることにしよう。
師匠が自分から面倒ごとを言うなんて夏に雪が降るよりも珍しいことだ。
前にいつまでも師匠に頼りきってちゃいけないと思い、師匠に試験を受けたいと提案したことがあった。
けれどもそのときは、
「何で俺様がお前ごときにんなめんどくせーことしなくちゃいけねんだよ」
と、そう言って相手にもしてくれなかったのだ。
この機会を逃すわけにはいかない。
俺は黙々と最後の仕上げに取り掛かった。
その間も師匠は俺の横で煙草をふかしながら難しそうな顔で再び唸り続けていた。
そういえば師匠のこんなに何かを考えている顔を見るのは初めてだった。
普段があまりにも考えない人なのか、あるいは……。
夕食の支度を終え、俺と師匠はテーブルについた。
「師匠、さっきの試験の話ですけれど」
俺はとにかく頭の中が試験のことでいっぱいになっていて、食べるものも食べずに
すぐさま師匠に試験の話を切り出した。
「ああ……」
師匠は俺の話を聞きながらも料理に手を付け始めている。
俺は続けた。
「前にも言ったかもしれませんが、俺、ずっと師匠に頼ってちゃいけないってずっと思ってたんです、
だから、師匠さえよければすぐにでも――」
カチャ――。
食器を置く音とともに師匠の手が止まりゆっくりと俺を見定めてきた。
少しだけ寒気を感じる。
俺はこの人がたまに何を考えているのかが読めないことがあった。
「し、しょう……?」
俺は恐る恐る口を開く。
と、次の瞬間師匠はニっと笑って、
「いいだろう、受けさせてやるよ、ハンター見習い卒業試験」
と、何か面白い物を見つけたような目で俺を見ながらそういった。
嬉しいことは嬉しい、だがこの人がこういう目をするときは大抵ろくでもないことが起こるのだ。
「ただし、一つ条件をだそう」
師匠が続け様に俺にそう言ってきた。
「条件、ですか?」
「そう、条件だ」
なんだろ条件って、あ――
「一日の喫煙上限をなくせだとか、朝帰りでも怒るなとかそういうのはダメですからね」
「八雲……、てめぇ、俺をどういう目で見てんだよ、どういう目で!」
「……、ご察しください」
「なかなか喰えねえ野郎になったな、てめぇは」
「なんといっても師匠に育てていただきましたからね」
俺と師匠のそんなやり取りが続く。
と、師匠は煙草を取り出して、それを口にくわえながら、
「自分の言葉には責任を持て、八雲、これが試験の条件だ」
そう言って師匠はどこか遠くを見るような目をした。
師匠にしてはずいぶんとまともな言葉が出てきたことに、俺は一瞬拍子抜けしてしまったがすぐに、
「はいっ!」
と、師匠に返事を返した。
ハンターの世界では優柔不断は命取りになる。
自分の意思表示は明確かつ迅速に、ハンターの心得の基本だ。
すると師匠は白い煙を口から吐きながら、
「じゃあ、早速だが自分の言葉には責任を持ってもらうぞ?」
と、そう言う師匠。
俺は意味が分からずに師匠に疑問を投げかける。
「それって一体どういう意味ですか……?」
すると師匠は一度ため息をついて、
「んなんで大丈夫か? お前はさっきすぐにでもって言ったよな」
と、師匠は呆れた表情で俺にそう返した。
「え、じゃあ――」
「そう、今晩、お前のハンター見習い試験を挙行してやる」
師匠はそれだけ言うと再び食事を始めた。
で、今に至るわけだが……。
俺は身震いしながらもポケットから一枚の紙を取り出した。
師匠に言われた試験内容をこれにメモしておいたのだ。
試験の内容はこうだった。
俺たちが住んでいる中立国家ウェルサレムは大規模な宗教国家で、国の中央に
大きな教会が建設されている。
ウェルサレム大聖堂と呼ばれる場所だ。
その大聖堂には一体の女神像が置かれていて、女神像には普通のルージェンとは段違いの
魔力を持ったルージェンが指をとしてはめられいて。
それを盗み出す、そういう内容だ。



